ECAD/MCADの適切な共同作業の実践

Judy Warner
|  投稿日 April 26, 2021
Collaboration

この記事では、Northwest Engineering Servicesの創設者であるDr. Zachariah Petersonにインタビューしながら、同社が社外の機構技術者とどのように共同作業を行っているかについて解説してもらい、共同作業を実現するために最も有用な実践とツールについて紹介してもらいます。

Judy Warner: 技術者として、また、Northwest Engineering Solutions (NWES) のオーナーとしてのご意見をうかがいたいと思います。同じデバイス、またはシステムに取り組んでいるのに、機構技術者と電気技術者の間で要件が異なることが時折あります。それらをまとめるときに、設計技術者が最もよく直面しがちな問題は何でしょうか?

Zachariah Peterson: 機構設計者と電気設計者との間では、多くのやり取りが行われます。私がPCB設計を始めた頃、そのほとんどはレイアウトの作業でした。一揃いの回路図と基板の図面があり、たとえばDXFファイルでいくつかの穴とコネクタが配置されていて、それ以外のすべてのレイアウトと配線は自分たちで行う必要がありました。今日の私たちは総合的な製品の開発にはるかに深く関与しており、クライアントとの間では機構設計技術者とのやり取りが最も多く行われています。機構設計技術者は基板を見る必要があり、私たちは筐体を見る必要があります。そこでは多くのやり取りが行われます。私たちは基板の3Dモデルを送るだけ、彼らは筐体を作るだけ、などということは、ほとんどありません。

Warner: 双方のエンジニアリングの垣根を越えて、最良のソリューションと結果を実現するために、どのようなツールやプロセスが役立つとお考えですか?

Peterson: STEPファイルは多くの場合に役立ってきました。STEPファイルをすぐにエクスポートしてレビュー用に送付できるので、多くの時間を節約できました。また、機構デザインに直接、アクセスし、そのMDADアプリケーションにPCBデザインをインポートできることも必要です。

Warner: 感圧電子機器と、それらの追加の変数と設計全体に与える影響についての記事を去年お書きになりましたね。機構技術者と電気技術者にとって、他にはどのようなアプリケーションや環境が作業をより複雑にするとお考えですか?

Peterson: 空間が限られており、十分に定義されていない場合、どのようなことでも困難となります。例として、電源とデータ用のアクセスポイントが1つしかない筐体に組み込まれるデバイスのプロジェクトを行ったことがあります。この筐体は製品の重要な部分で、コネクタの配置、取り付け場所などの要件に妥協することなく、筐体内の基板にアクセスを可能にする独自の方法を作り出す必要がありまりした。非常に多くの要件の間でバランスを取る必要があり、それらの重要な要件の多くは機構や環境に関するものでした。

Warner: 多くの人々は、MCADを使用するときは筐体への収納について考えますが、正確な3Dコンポーネント モデルの作成については考えていないと思います。設計のこの部分について十分な注意が払われない場合、どのような問題が考えられますか?

Peterson: 例を挙げましょう。私たちが最近設計した独自の基板の場合、顧客は変わったUSBプラグを使用しており、基板全体に水平方向に設置されており、その近くには背の高いコンデンサーのグループがありました。これらのコンデンサーによりUSBプラグの1つにコードを接続することが非常に困難となることが判明したため、移動が必要になりました。コンポーネントに3Dモデルが添付されていなければ、誰かがこの問題が気付いたとは限りません。コンポーネントに関わる衝突のシナリオは他にも数多く存在し、3Dでは簡単に見つかりますが、データシートでコンポーネントのサイズを比較しただけでは見逃してしまう可能性があります。

Warner: 最近まで、機構技術者と電気技術者とではファイル形式が異なり、双方でファイルを交換する過程で間違いが発生しやすいことから、双方の共同作業は大きな課題となっていました。双方の関係者の間で正確性と信頼性を保証するには、どのような方法が役に立つでしょうか?

Peterson: 私たちは、コンポーネントが基板にどのように搭載されるか、基板が筐体にどのように取り付けられるよう設計されているかを、機構技術者に理解してもらう必要があります。そうすれば、機構技術者は製造可能な基板を収納するための筐体を正しく設計できるようになります。場合によっては、コンポーネントの選択を機構技術者に手伝ってもらう必要があります。空間が限られていたり、フォームファクターが特殊な場合には、特にそうです。

機構技術者は通常、自分たちの構想を私たちに伝える必要があり、その構想の中で作業を行う必要があります。逆に、私たちから機構技術者に構想を伝えることは普通はありません。このため、機構技術者は極めて明確に寸法が指定された図面とモデルを渡す必要がありますが、そのためには私たちがPCBの理想化されたモデルを機構技術者に渡すのが最善です。機構設計側と共同作業を進める場合、最初のコンポーネント配置が完了した後で、私たちは機構技術者がプロジェクト ファイルにアクセスできるようにします。これにより、MCADツールにインポートしてすべての部分が正しく収納可能なことを彼らに確認してもらえるようになります。

Warner: 現在と将来にわたって、機構技術者と電気技術者がより効果的な共同作業を進められるようにするため、どのような傾向が見られるようになるとお考えですか?

Peterson: 既に述べたように、電気技術者は機構側でもより積極的な役割を果たすようになります。そこでは、クラウドが双方の共同作業を推し進める大きな要素となるでしょう。ただし、電子メールやチャットのプラットフォームに留まらない、より進んだものも必要になるでしょう。電子メールやチャットなどのツールも貴重ですが、設計プロセス全体でリアルタイムな話し合いを行う際に役立つとは言えません。相互の共同作業を促進するものであれば、どんなものでも有益な機能となります。今後、その面でさらに多くの要素が現れると期待しています。

Warner: お話をありがとうございました。最後に言っておきたいことはありますか?

Peterson: 新しい設計分野に飛び込み、新しい人々と作業を開始することを恐れないでください。学習を続けることで自分の技能を磨くことができ、また学習自体が楽しみとなるでしょう。

注: Altiumのリソースページでは、Zachariah Petersonに関する他の記事や、ECAD/MCADのベストプラクティスと統合について詳細を参照できます。
 

Dr. Zachariah Peterson Owner of Northwest Engineering Services

Dr. Zachariah Peterson
Owner of Northwest Engineering Services

 

筆者について

筆者について

Judy Warnerは、25年以上にわたりエレクトロニクス業界で彼女ならではの多様な役割を担ってきました。Mil/Aeroアプリケーションを中心に、PCB製造、RF、およびマイクロ波PCBおよび受託製造に携わった経験を持っています。 また、『Microwave Journal』、『PCB007 Magazine』、『PCB Design007』、『PCD&F』、『IEEE Microwave Magazine』などの業界出版物のライター、ブロガー、ジャーナリストとしても活動しており、PCEA (プリント回路工学協会) の理事も務めています。2017年、コミュニティー エンゲージメント担当ディレクターとしてAltiumに入社。OnTrackポッドキャストの管理とOnTrackニュースレターの作成に加え、Altiumの年次ユーザー カンファレンス「AltiumLive」を立ち上げました。世界中のPCB設計技術者にリソース、サポート、支持者を届けるという目的を達成すべく熱心に取り組んでいます。

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