インターネットを見ると、興味深いグラウンディングの推奨事項がいろいろ見つかりますが、用語だけが独り歩きして、実際の電気的挙動に対する適切な文脈や理解がないままPCBに当てはめられていることも少なくありません。DC向けの推奨がACに適用されたり、低電流向けの考え方が高電流に適用されたり、その逆もあったり……と、例を挙げればきりがありません。そうした推奨の中でも特に興味深いグラウンディング手法の1つが、PCBのスタ―グラウンドです。
この用語はPCB設計に特有のものではなく、PCB上のグランド定義を直接扱わないさまざまな文脈でも使われます。もともとはシステム解析の用語であり、実際の回路基板でグランド接続をどう実装するかという実務面への十分な配慮なしに、PCBへ適用されてきたように見えます。レイアウトによってはスタ―グラウンドを模倣できる場合もありますが、実際に考え始めると非現実的な作業になりがちです。基板上で適切に設計する方法は、リターンパスをほとんど制御できない場合や、絶縁が必要な場合を除けば、グランドプレーンを使うことです。
PCBでスタ―グラウンドを実装するのは難しく、常に必要というわけでもありませんが、家庭用、商業用、工業用の配線では、ある意味でこれに近いことが行われています。マルチボードシステム、特に絶縁やケーブルによる長距離接続が必要なシステムでは、PCBのスタ―グラウンドの考え方に沿った興味深い設計を、やや大きなスケールで実装することもできます。ここではスタ―グラウンドという考え方をもう少し深く見ていき、特定の条件下でこの接地方法をPCBに適用できるケースを確認してみましょう。
スタ―グラウンドは通常、複数のモジュール、計測器、またはその他の機器を1つの接地点に接続し、それらすべてが同じ電位を持つようにするために使われます。住宅配線で使われるデイジーチェーン状のコンセント群も、基本的には、保安用および最終的な基準点としての大地を中心にしたスター構成と見なせます。同じ考え方は、住宅配線と同様に(ただしデイジーチェーンなしで)同一の電源回路に接続された複数のモジュールや計測器にもよく適用されます。
この用語をPCBに適用すると、配線に不利で(特にインピーダンス制御配線に対して)、EMIにも不利で、さらに多くの場合は電力分配にも不利なグラウンディング戦略を促すことになります。PCB上でスタ―グラウンドを実装することでEMIのないミックスドシグナルシステムを作れるケースが1つありますが、これは結局のところ設計者に何の利点ももたらさない自明なケースにすぎません。また、スタ―グラウンドに関する類似のマルチボード設計ケースもありますが、これも上記構成と同じトポロジです。DCや低電流・低周波のアナログ/オーディオのようなケースでは、PCB上のスタ―グラウンドが適切な場合もありますが、それはシステムに他のどのような機能が含まれているかに依存します。
明らかに、スタ―グラウンドはすべての人やすべての設計に向くものではありません。それにもかかわらず、EMI問題、特にミックスドシグナルシステムの万能薬として推奨され続けているのを今でも見かけます。では、なぜPCBでの使用を本来意図していなかったにもかかわらず、いまだにPCBで推奨されるのでしょうか。
人々がPCBでスタ―グラウンドを勧め続ける理由は2つあります。それは、デジタルと高周波アナログの間の絶縁を確保すること、そしてグランドループを防ぐことです。この2点を見ていきましょう。
この推奨は、昔からある誤った設計指針に由来しています。つまり、高周波やデジタル干渉を防ぐためにプレーンにスプリットや切り欠きを入れるべきだ、という考え方です。この指針は配線にもEMIにも悪く、特に必ずしも合理的とはいえない不自然なレイアウト選択につながります。
スタ―グラウンドの考え方では、ある種類の信号(DC、低周波AC)と別の種類の信号(高速、高周波など)のリターンパスの間、あるいは独自のグランドポリゴン上で分離したい2つの回路グループの間に、高インピーダンスの障害を置こうとします。これが理にかなうケースとして、私は次の3つを考えます。
こうした特殊なケースを除けば、EMIやクロストークの観点から、一般にPCBでスタ―グラウンドを使う合理性はありません。デジタル信号を含むスタ―グラウンドでは、基板のセクション間を配線することができず、配線すると大きな放射EMIが発生します。要するに、2つのセクション間のギャップをまたいで配線される信号は、そのリターンパスを規定する非常に高インダクタンスのループに直面することになります。

MHz以上の周波数を扱っていて、アナログ部近傍のインターフェースまで配線が必要なデジタル信号を使う場合でも、基板レイアウトを賢く行えばスタ―グラウンドは不要です。リターンパスの分離は問題になりません。リターンパスはグランドプレーン全体に広がるのではなく、配線の近傍で自然に容量結合します。この場合の最善策は、連続したグランドプレーンの上で、アナログ回路とデジタル回路、およびそれらの部品を適切に別領域へ区分することです。
上記のケース2について言えば、相互接続部と基板が完全にシールドされている限り問題ありませんが、高いノイズ耐性を持つ高感度測定が必要な場合には不適切です。この場合は、基板レベルおよび筐体レベルのシールドによって高い遮蔽効果を得ることが解決策になるかもしれません。
PCBでスタ―グラウンドが推奨されるもう1つの理由は、グランドループを排除すること、あるいはそもそも発生させないことです。もし設計にグランドループの問題があるなら、それはスタ―グラウンドでは解決できない別の問題が設計内に存在するということです。これもまた、PCB設計が電子工学の他分野から用語を取り入れ、本来意図されていない形で使ってしまっている例です。
#2で説明した意味でのグランドループは、#1(b)で説明したように、あるグランドネットと筐体の間に2つの接続がある場合、または異なる2つの層のGNDが高インピーダンス接続で結ばれており、それらの間にゼロでない電位差がある場合に、PCB上でも起こり得ます。
PCB上では、これと類似した状況がより小さなスケールで生じます。これはデジタル部だけ、アナログ部だけ、両方のセクション、あるいは両セクション間(筐体が関与する場合)で発生し得ます。仮想的なスタ―グラウンドPCBにおいて、デジタル部だけで発生する例を以下に示します。

分離された機器で生じるこの問題は、長いシールドケーブル内でシングルエンド信号群を使うのではなく、長距離ケーブルで差動信号を使う主な動機の1つです。シールドケーブルは、グランドオフセットが大きくない短距離配線では問題ありません。しかし、シールドが両端でグランドに接続され、しかもグランドオフセットがある場合、そのシールドケーブルはグランドループ内の電流を運ぶことになります。これは安全上の懸念です。どちらか一方のシールドやシャーシ接続部に人が触れると、大地への経路を作って感電する可能性がありますし、ケーブルが焼損することもあります。
PCB上では、グランド接続に高インピーダンスがあってグランドプレーン内にある程度のグランドオフセット電位を生じさせない限り、実際にはこの問題はほとんど起きません。これが起こり得る場所の1つは筐体で、不適切な状況で多点接地を行っている場合です(たとえばRF用途ではなく高電流DC用途など)。そして安全上の問題になるのは、次の条件がそろった場合だけです。
ここで注目すべきは、私は異なるグランド領域の可能性についてすら触れていないということです。すべて同一のグランド領域(単一プレーン)内の話です。要点は、スタ―グラウンドであってもグランドループは起こり得るということ、そして信号品質の問題を引き起こすグランドループがあるなら、それはスタ―グラウンドでは解決できない別の問題群がある可能性が高いということです。ほとんどのPCBでグランドループに関する主な問題は、低レベルのアナログ信号(通常は何らかのセンサからの信号)に干渉し得る広帯域ノイズであり、その結果、サンプリング信号のSNRが高くなり、不正確なデータにつながることです。
適切に設計されたPCBでは、電流の低インピーダンスなリターンパスを確保するために、グランド回路を精密なアプローチで構成する必要があります。ノイズ対策として、設計ではリターン電流経路としてグランドプレーンを利用できます。絶縁を実現するために、アナロググランド領域とデジタル領域の間に分断を設けてはいけません。唯一の例外はオーディオ周波数帯で、DC電源をそれ以外のすべてから分離する必要があり、なおかつ基板全体でDCのみを扱っている場合です。ほかにも低周波における例外はいくつかあると思います。
デジタルセクションを含む大半の設計では、グランド領域を分割して配線性の悪いスターグラウンド構成を作るのではなく、グランドプレーン上で基板を適切にレイアウトすることに注力すべきです。グラウンディングに関するさまざまなケースや、スターグラウンドの問題点については、この記事で詳しく読むことができます。ご覧いただければわかるように、PCB設計においてスターグラウンドが許容される主なケースは、まったく自明なものです。これを実装しても利点はなく、設計の各セクションをそれぞれ別基板にしたほうがよいくらいです。基板を適切にレイアウトすれば、正しい配線によって放射EMIを低減できます。
最高のPCB設計ソフトウェアを使うなら、スターグラウンドのような時代遅れの手法に頼る必要はありません。Altium Designer®の完全な設計、レイアウト、スタックアップ作成機能を使って、物理レイアウトを作成し配線できます。設計が完了し、製造業者にファイルをリリースしたい場合は、Altium 365™プラットフォームを使えば、コラボレーションやプロジェクト共有を簡単に行えます。
Altium 365上のAltium Designerで実現できることは、まだほんの一部しかご紹介できていません。今すぐAltium Designer + Altium 365の無料トライアルを開始してください。