適切なツールの使用は、作業時間の大幅な短縮、コストの削減、フラストレーションの解消につながります。しかし、プリント基板に関しては、認知度が低かったり、ソフトウェアのアドオンであることから、多くの優れたツールが無視されているのが現状です。こうしたツールには、電流密度解析ツールのPDN Analyzer™、MCADとの統合、インタラクティブ配線、マルチボードの対応、サプライチェーンの管理などがあります。これらの機能を使って、設計プロセスを簡素化し、時間を節約できます。すぐに始められるように、作業に役立つPCB設計ソフトウェアを一覧にまとめました。
電力設計は一見シンプルに見えるかもしれません。集積回路(IC)をパワープレーン、またはパワーレールに接続し、それらの動作を監視するだけです。簡単といえばそのとおりですが、ずさんな設計のPDNではトレースの電流が過剰になったり、基板で電圧降下が生じる可能性があります。そのため、設計段階で対策を立て、基板のPDNを解決することが大切です。この説明だけでは十分にご理解いただけないかもしれませんので、PDN解析が基板設計で重要なステップになっている理由を見ていきましょう。
電流密度: 現在、チップの性能は従来よりさらに強化されてきており、それに伴い、消費される電流もさらに大きくなっています。ご存じのように、電流密度が高くなると、温度が上昇します。トレースの電力密度が高くなると、放熱としてPCBに分散されるエネルギー量が多くなります。そのため、トレースが薄すぎると、高温で損傷してしまう可能性があります。多くの場合、レイアウトの作業やアクティブまたはパッシブ冷却システムの設計によって問題の徴候に対処することばかりに集中しがちです。放熱に対する対応は必要ですが、電流密度を削減することで、その根本にある問題を解決できます。多くのシミュレーターでは、電流が過度になっている箇所が示されますが、それらはわかりにくい別のソフトウェアであることがよくあります。PDN解析がプログラムに統合されていれば作業が大幅に容易になり、基板上で電流が過度になっている箇所を視覚的に特定できます。
電圧降下: 高電流密度と同様に注意が必要なのは電圧降下です。電力消費の多いチップで突然電流スパイクが発生したときに、そのトレースの大きさが不十分だと、深刻な電圧低下が引き起こされることがあります。実際、最近のICの動作に必要な電圧は小さくなる一方なので、小さな電圧降下であっても問題になる可能性があります。チップが10Vに近い電圧で動作している場合は0.5V低下しても余裕がありますが、2Vで動作している場合は、降下を避けることが不可欠です。電圧降下のソリューションはシンプルで、トレースを広げるか、短くするか、あるいはその両方です。ただし、解決すべき問題がなかなか検出できない場合があります。この場合、回路の電圧低下を視覚的に示す電流密度解析ツールのPDN Analyzerを使用すれば、どのトレースを広げる必要があるのか、あるいは再調整する必要があるのかを簡単に判断できます。
これらの問題についてPDNを解決する価値はありますが、PDN解析ツールのインターフェイスとデザインを行ったり来たりするのは面倒になる可能性があります。そのため、基板設計CADに統合されている電流密度解析ツールの使用をお勧めします。PDN解析ツールをいつでも利用できるようにしておくと、外部の解析ツールを使用するよりも、これらの問題をすばやく検出し、解決できる可能性が高くなります。
設計プロセスで時間がかかるのは、3Dモデリングとクリアランスチェックの段階です。リジッドフレキシブル基板を設計している場合は、折りたたみ可能な紙製のモデルを依頼して全てが正しく適合するか確認できます。適合しない場合は、もうひとつ別のモデルを入手する必要がありますが、これには数日または数週間かかり、全ての作業に遅れが生じます。従来型の基板を設計している場合でも、筐体内に全てが収納されるか確認する必要があり、モデリングを実行している機構技術者とのやりとりが手間になる可能性があります。現在、基板とコンポーネントの3Dモデルを生成したり、筐体内でクリアランス チェックを実行したり、リジッドフレキシブル回路に対する基板の折りたたみ状態をシミュレーションするツールもあります。これらのツールを使用すると、筐体が変更されたときに基板の修正を迅速に行うことができ、クリアランス チェックを直接管理できます。
クリアランス チェック: 状況は常に変化します。このことは設計プロセスにも言えることです。基板を設計し終わり、試作を発注した途端に、筐体の形状が変わっていることに気づくということがあります。その場合は、レイアウトをやり直し、筐体を設計した機構技術者と一緒に適合するかどうかチェックして、作業をやり直さなければなりません。さらにその後、筐体が一から作り直されていることに気づくこともあります。基板のモデルを生成して、クリアランスチェック用に筐体モデルをインポートできるソフトウェアがあれば、こうした再設計の際の大きな問題が小さな問題で済むようになります。
リジッドフレキシブル: リジッドフレキシブル基板は、航空宇宙業界で使われ始めたものですが、現在はあらゆるところで導入されています。リジッドフレキシブル基板を設計している最中に、クリアランス チェックが突然新しい形式になることがあります。コンポーネントをごちゃまぜにしたり、ケースをたたいたりすることなく全てが正しく折りたためるか確認する必要があります。MCADとの統合が優れている点として、リジッドフレキシブルモデルを生成し、自動でシミュレーションできるプログラムがあります。
STEPモデル: クリアランスチェックだけが3Dの懸念事項ではありません。STEPモデルの生成や配置も悩みの種になることがあります。多くの場合、1つのコンポーネントに対してフットプリントとモデルの両方を構築しなければなりません。しかし、特定のプログラムを使えば、フットプリントを定義し、それに基づいてSTEPモデルを生成できます。2つのステップが1つになるため、効率が上がります。コンポーネントモデルがある場合は、それらを配置する必要があります。私は、他のコンポーネントから突き出ていないか確認するためだけに、1つのコンポーネントを正確な場所に配置する座標をイライラしながら入力したことが何度もありました。 スマートで、直感的なコンポーネントの配置機能を使用すると、部品の正確な座標位置を入力するために時間を割く必要はなくなります。自動調整付きの機能をドラッグアンドドロップするだけで時間を節約できます。
トレース配線については自動配線機能付きのツールに引き継ごうとしましたが、案の定うまくいきませんでした。しかし、創造性を妨げずに配線時間を大幅に短縮できる新しい 「アクティブ」配線機能を提供する企業がいくつかあります。
配線は、特にEMIや高速トレースの場合、非常に重要です。単にトレースの長さを制限してトレースが曲がりくねらないようにするためであって、悲惨な状態にしたいのではありません。配線は署名と同じくらい個人を表すものです。マシンがこの作業を行っても、設計者の痕跡は設計に残りません。そうはいっても、大型のボールグリッドアレイ(BGA)など特に面倒な配線を扱う場合、少しだけ助けが必要になることがあります。優れたガイド付きの配線機能を使うと、エスケープ配線を最適化し、結果は好きなように微調整できます。配線がPCB設計ルールとその優先順位に従うことも重要です。高速チップの配線時に、ツールがクリアランスを無視することは避けたいはずです。
アクティブ配線ツールを使用すると、2時間かかるバスの手動配線を5分で終えることができます。これが最高のツールと呼ばれるのは、一度、領域全体を配線してから、結果を好きなように調整できるためです。実際、複数のレイヤーの配線を一度に行ったり、3Dで配線できる機能もあります。また、これらは全てデザインルールに従って行われます。この種類のツールでは、高性能ソフトウェアの機能をわずかなコストで利用できます。
電子機器はこれ以上シンプルになることはないと言っても過言ではないと思います。設計に複数の基板を使用することが増えていることが、その明白な証拠です。マルチボードPCBは、設計する上で悩みの種になる場合があります。異なる複数の基板上の物理的なクリアランスについて心配し、個々の基板上や基板間のエレクトリカルルールおよび再設計の可能性について考えなければなりません。幸いにも、マルチボード設計を簡単にするツールを利用できます。
システムレベルでのMCADとの統合および3Dモデリング: PCB設計ソフトウェアへのMCADの統合の利点については前述しました。これがいかに役立つか想像をめぐらした上で、お使いの基板の数を掛け合わせてみてください。異種の基板での3Dクリアランス チェックには非常に手間がかかります。あらゆるものが個々の基板に適合しているか、全ての基板が適合するか、そしてその全てが筐体に収まるか確認する必要があります。これらの新しいツールは、モデルを生成して、アセンブリ全体でクリアランス チェックを実行する機能を備えています。
エレクトリカル ルールチェック: アセンブリのチェックに関しては、マルチボード機能を使用して、基板間でエレクトリカル ルールチェックを実行できます。例えば、ある基板から別の基板につながるトレースがあり、行き止まりで終端しているとしましょう。この新しいソフトウェアでは、アセンブリ全体に対するエレクトリカル ルールチェック中にそのエラーをハイライトしていきます。そのため、基板ごとに個別にルールチェックし、1つずつ問題を修正する必要はありません。
信号チェック: 例えば、筐体の変更により、1つの基板のピンコネクタを反転しなければならないとします。通常、この状況は、複数の基板でトレースの配線をやり直さなければならないため非常に大きい問題になります。この問題が発生した場合は、新しいコネクタ構成で信号をシミュレーションし、問題をハイライトできます。大きな再設計が必要になる、または基板を廃棄するしかないような大きな問題が、小さな問題に変わります。実際、現時点でこの機能を全て備えているソフトウェアはないため、誰がその機能の開発に取り組んでいるのかと思われるかもしれません。Altiumは、この素晴らしいツールに少し前から取り組んでおり、 Altium Design 18のリリース時に提供できるようにする予定です。楽しみしてお待ちください。
私たちはビジネスマンではなく設計者であるため、PCB設計においてサプライチェーン管理がわずらわしく感じることがよくあります。このような場合は、サプライチェーン管理ツールが役に立ちます。これらのツールは、部品表(BOM)チェックを実行して、必要な全てのコンポーネントが利用可能であるか確認し、使用できないものがある場合は新しいコンポーネントの提案も行います。また、改良したい従来の設計の代わりになるものを見つけることもできます。この種のツールを使用すると、新しい部品やサプライヤーを見つけるのにそれほど時間がかからないため、製造業者と連携しやすくなります。
設計者の多くは、独自のコンポーネントを調達することはよい考えだと思っています 。しかし、コンポーネント ライブラリやサプライチェーンの管理には手間がかかり、ほとんどの設計者はやりたくないと考えています。それでは、その作業をやってくれるツールを手に入れればよいのではないでしょうか。サプライチェーンの管理に役立つツールは複数あります。これらのツールは、全コンポーネントのライブラリを最新の状態に保ち、どこにどの在庫があるかサプライヤーとやりとりしてこの作業を行います。これにより、次の基板を発注する準備ができた段階で、前回使用したICが廃止されていることに突然気づくようなことはなくなります。サプライチェーン管理ソフトウェアを使用することで、そのICが見つからないことをあらかじめ把握し、代わりとなる製品について提案を受けることもできます。これらのプログラムは、部品設計で使用していたコンポーネントを追跡することもできます。例えば、3年前に使用していた優れた設計があり、それを調整して新しい製品に利用したいと考えているとします。しかし、コンポーネントがどのように変更され、どれを使用すべきかについて調査する作業は避けたいものです。その作業は、このソフトウェアが代わりにやってくれます。
優れたライブラリ管理ソフトウェアのもうひとつの利点は、製造業者とのやりとりがしやすくなることです。製造業者は、設計とその全ての情報を求めているだけでなく、正確な最新のBOMも必要としています。設計者は作業の設計部分を担当するために雇われているのですから、製造業者とのBOM情報の共有はソフトウェアに任せましょう。製造業者との十分なコミュニケーションは、優れたPCBを製造する上で重要です。このソフトウェアはその役割を担うことができます。
これは1つのツールではなく、使用する全てのツールを兼ね備えた1つの機能です。統合設計は、メインプログラムに統合されているツールを意味します。ツールを使用して設計プロセスを迅速化している場合は、必要に応じていつでもツールを利用できることが必要です。
これら全てのツールに加え、最初から統合されているツールを備えた、優れたPCB設計ソフトウェアがあります。基板設計CADのAltium Designerは、PDN解析、MCADとの統合、インタラクティブ配線、マルチボードシステムの対応、サプライチェーン管理など、その全てのツールを備えています。これらのツールは全てメインインターフェイスから利用でき、簡単にアクセスできます。Altium Designerは、高度なテクノロジーをわずかなコストでユーザーに提供することで、テクノロジーギャップを補います。今日からこれらのツールを活用して、効率と設計を改善しましょう。
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