先ごろ、ヨーロッパの非常に創造力豊かな技術者が、レイヤー間の接続について、従来のスルーホールより高密度の、これまでにない概念を提案しました。その技術者は、NEXTGin Technologies BV [1] のJoan Torne氏です。彼の技術は「VeCS(Vertical Conductive Structures)」というものです。この技術は、従来のPCB TH製造設備を使用して、0.4mmピッチのBGAまで性能を落とし、密度をHDIレベルにまで高めます。
この概念では、ペック穴開け、スロットまたはキャビティの基板内への(接続を隠すため)あるいは基板を貫通した配線を行い、金属化してメッキします。最終的な実装段階では、図1aのように、やや大きい穴を開けてレイヤー間に垂直の接続を作成します。図1bからわかるように、これらのより小規模な垂直接続は、ドリルで穴を開けた従来のスルーホールほど場所を取らないので、配線により多くのスペースを使うことができます。図1cの作成例では、1.0mmピッチのBGAの場合のTH、マイクロビア、およびVeCSを比較しています。THでは、スイングマイクロビアを使用しながらドッグボーンブレークアウトの下に2トラックを押し込み、7トラックを達成できます。7トラックのVeCSのブレークアウトは同様の密度です。ピッチを0.5mmに落としたBGAの場合、THでは、パッド内ビアの使用時1トラックを超えて配線する余地はありませんが、ブラインドビアの間には7トラックを配線できます。VeCSは、ほぼ同じ密度で、垂直接続の間に5トラックを配線できます。1.0mmのピッチでキャビティに2つの異なる配線を施した例からわかるように、ピッチがより大きい場合、VeCSブレークアウトは柔軟性があります。
図1 a. VeCSテクノロジーは、完全な穴を採用するのではなく、レイヤーを接続する垂直の
トレースを配線します。b. 垂直の壁のみを使用して作られた追加の配線スペースのメリットを
3Dビューで示しています。c. ブレークアウトが1.0mmと0.5mmの2つのBGAブレークアウトの例で
2つの一般的なテクノロジー、つまりTHおよびHDIとVeCSを比較しています。
図1cの配線ルールを表1に示します。
表1 スルーホール、HDIマイクロビア、VeCSテクノロジーを使用した場合の
2つのBGAブレークアウトの設計および配線ルール
VeCS製造プロセスは、いくつかのステップが追加されている以外、従来のマルチレイヤー製造プロセスと変わりません。
1. BGAのランドの間にスロットを開けるまたは配線する
2. 通常どおり金属化する
3. 金属化されたスロットに隣接するVeCSブレークアウトの画像を作る
4. 通常どおりメッキする
5. 通常どおりストリップおよびエッチングする
6. 最終的な製造段階で、垂直トレースのメタライゼ―ションに穴を開ける
このプロセス(図2)は、レーザードリルが不要で、パネルメッキプロセスと両立できます。
図2 従来のプロセスと全く変わらないVeCS 製造プロセス
このテクノロジーに関して発表されている唯一の記事が2017年2月発行のPCB Magazineに掲載されています [2]。Torne氏が信頼性をテストする試験車を作り、その製作にAltium Designerを使用したとのことです。製造および試験はWUSで行われました。不具合が生じるまで、無鉛リフローサイクルおよび熱サイクルを複数回実行した結果、スルーホールと同程度でした。垂直トレースは穴よりインダクタンスが小さいため、シグナルインテグリティーは若干優れているようです。ただし、スロットやキャビティがGNDの構築に干渉することがあります。
コストのトレードオフとして、高配線密度により信号層やリファレンスレイヤーを減らしたり、基板を小型化してパネルあたりの数を増やしたりできることが期待されます。その結果、コストを節約して、基板にキャビティやスロットを作成するため、一歩進んだ穴開けや配線のプロセスにお金をかけることができます。
このコンセプトを使用する可能性がある場合は、プリント基板製造業者に連絡してテスト基板をお試しください。設計で使用したい場合は、NEXTGin [1] でこのテクノロジーの特許ステータスをご確認ください。NEXTGinの報告によれば、現在プリント基板製造業者2社がこのテクノロジーを採用しているとのことです。
参考文献