マイクロビア製造プロセスとHDI基板

Happy Holden
|  投稿日 2019/01/14, 月曜日  |  更新日 2020/07/28, 火曜日
マイクロビア製造プロセスとHDI基板


初期のHDI製造

高密度相互接続プリント基板に関する取り組みが始まったのは、研究者たちがビアサイズの縮小方法を調べ始めた1980年のことです。最初に革新を起こした人物の名前は分かりませんが、初期のパイオニアには、MicroPak LaboratoriesのLarry Burgess氏(LaserViaの開発者)、TektronixのCharles Bauer博士(光誘電ビアの開発者)[1]、ContravesのWalter Schmidt博士(プラズマエッチングビアの開発者)などがいます。

初の製品版のビルドアップ基板(シーケンシャルプリント基板)は、1984年のHewlett-Packardによるレーザードリル加工FINSTRATEコンピューター基板です。1991年には、日本のIBM野洲によるSurface Laminar Circuit(SLC)[2]とスイスのDyconexによるDYCOstrate [3]が続きました。図1は、初のHewlett Packard FINSTRATE基板を表紙に載せたHewlett-Packard Journal(1983年)です。

 

HPのFinstrateレーザービア

レーザードリル加工のマイクロビアは、HPが意図的に開発したのものではなく、新製品の32ビットマイコンチップをリバースエンジニアリングした結果としてもたらされました。「FOCUS」と呼ばれたこのチップは、NMOS-IIIで開発された32ビットのマイクロプロセッサーで、極めて大きい電流を消費するという特性を持っていました。当初意外に思われたのは、この新しいマイクロプロセッサーが、1.6mm厚の基板にある標準0.3mm径のスルーホールビアのインダクタンスをドライブできないという点です。ドライブできたのは、20~30ナノヘンリーのインダクタンスか0.125mmのブラインドビアのみでした。次の驚きは、FR-4の通常損失(Dj=0.020)をドライブするエネルギーがないことでした。そのため、純粋なポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が使用されました。ICの冷却要件によって、極小のブラインドビアと非常に低損失の絶縁体を備えたメタルコア基板が必要とされていたため、ダイレクトワイヤボンド集積回路(IC)を備えた銅コアのビルドアップ基板が作成されました。

 

一般生産された最初のマイクロビアのスクリーンショット

図1. 一般生産された最初のマイクロビア。1984年に生産を開始したHewlett Packard
FINSTRAT
は、ダイレクトワイヤボンド集積回路(IC)を備え、絶縁体として純粋な
PTFE
を使用した銅コアのビルドアップ基板でした。

 

IBMのSLCフォトビア

1991年にIBMがSLCテクノロジーを世に出して以来、さまざまなHDI配線基板量産手法が開発および実装されましたが、生産量の観点から見て一番なのはレーザードリル加工テクノロジーです。その他の手法も多くのPWB製造業者で引き続き使用されていますが、はるかに小規模にとどまっています。

レーザードリル加工プロセス(以下、レーザービアと言う)は現在最も広く使用されているプロセスで、今後さらなる普及が見込まれることから、より多くの注目が集まると考えられます。ビアホール形成はHDI配線基板の製造において1つの要素にすぎないと理解する必要があります。マイクロビアホールのあるHDI配線基板の製造は、これまでの基板製造には見られない多数のプロセスを伴います。

 

HDI製造の基本

図2は、シーケンシャルビルドアップテクノロジー(SBU)または高密度相互接続の詳細な製造プロセスを示したものです。主な要素は次の3つです。

  • 絶縁体の構成
  • ビアの形成
  • 金属化手法

シーケンシャルビルドアップテクノロジー(HDI)のスクリーンショット

図2. シーケンシャルビルドアップテクノロジー(HDI)の主な要素は
絶縁体の構成、ビアの形成、金属化手法です(DuPont
社提供)。

 

各マイクロビアテクノロジーの製造プロセスは、ベースコアから始まります。ベースコアは、パワープレーンとGNDプレーンを備えたシンプルな両面基板の場合もあれば、これらのプレーンに加えていくつかの信号パターンを持つ多層基板である場合もあります。通常、コアにはメッキスルーホール(PTH)があり、これらのPTHがBVHになります。このようなコアはアクティブコアと呼ばれます。


絶縁体と絶縁材料

IPC-4104A規格では、マイクロビア製造で使用される絶縁体と導電材料の概要が示されています。これらの絶縁体の一部は、チップパッケージとPWB HDI用途の両方で使用できます。HDIおよびマイクロビア材料向けに、IPC/JPCA-4104規格の関連材料仕様に対して相互参照が示されています。

材料を選択するには次の質問について考慮する必要があります。

  • 絶縁体では、コア基板材料で現在使用されている化学的性質と適合する化学的性質が使用されるか?
  • 絶縁体の銅メッキ付着は許容範囲内か? (多くのOEMの要望は、銅1オンス[35.6µm]あたり>6ポンド/インチ[1.08 kgm/cm])
  • 絶縁体は、メタルレイヤー間に信頼性の高い適切な絶縁スペースを提供するか?
  • サーマル要件を満たすか?
  • 絶縁体は、ワイヤボンドおよび再作業で望ましい「高」Tgを実現するか?
  • 複数のSBUレイヤーによる熱衝撃(半田フロート、高速熱サイクル、複数回のリフロー)に耐えられるか?
  • マイクロビアに信頼性の高いメッキ処理を施せるか(ビアの最下部まで十分メッキできる余地があるか)?

HDI基板で使用される一般的な絶縁材料は9種類あります。IPC-4101BやIPC-4104AなどのIPCスラッシュシートには、これらのうちの多くが記載されていますが、IPC規格で規定されていないものも多数あります。9つの材料は次のとおりです。

  • 感光性液体絶縁体
  • 感光性ドライフィルム絶縁体
  • ポリイミドフレキシブルフィルム
  • 熱硬化ドライフィルム
  • 熱硬化液体絶縁体
  • 樹脂被覆銅(RCC)箔、強化二重レイヤー
  • 従来型FR-4コアおよびプリプレグ
  • 新しい「スプレッドガラス」のレーザードリル加工可能(LD)プリプレグ
  • 熱可塑性物質

 

相互接続ビアの形成

ここでは、さまざまなドリル加工ビアホール形成テクニックを取り入れたプロセスについて説明します。0.20mm(0.008インチ)より小さいスルービアのドリル加工も可能ですが、実際はコスト上の理由からお勧めしません。0.20mm(0.008インチ)未満では、レーザーやその他のビア形成プロセスの方がコスト効率が高くなります。HDIプロセスで使用されるIVHの形成方法は多種多様にありますが、レーザードリル加工が最も有名です。各種のビア形成手法には形成できるビアの最小サイズにいくらかの制限があり、それぞれ、ビア形成速度が大きく異なります。  

小型ビアの機械ドリル加工のスクリーンショット

図3. 初期のHDI量産を可能にした小型ビアの機械ドリル加工。
図3a:
深さを制御したドリル加工、図3b: 順次積層。

 

機械ドリル加工

ブラインドビアおよびベリードビアの形成に使用される最も古いテクニックは、図3aと3bに示した機械ドリル加工と順次積層です。小型ドリルビット製造と高速機械ドリル加工の両方が進歩したため、このテクニックは現在もいくつかの状況で使用されています。

 

マスビアプロセスのスクリーンショット

図4. PWBパネルでのブラインドビア形成には通常レーザーテクノロジーが使用されますが
化学エッチング、プラズマまたは光絶縁体などの「マスビアプロセス」も使用されています。

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レーザービアテクノロジー

レーザービア加工は、マイクロビアホール形成プロセスの中で群を抜いて普及していますが、最も高速なビア形成プロセスではありません。最も高速なのは小型ビアの化学エッチングで、推定速度は8,000~12,000ビア/秒です。これは、プラズマビア形成とフォトビア形成にも当てはまります(図4)。これらはすべてマスビア形成プロセスです。レーザードリル加工は、最も古いマイクロビア形成テクニックの1つです[1]。レーザーエネルギーの波長は赤外線および紫外線領域です。レーザードリル加工では、ビームフルエンスサイズおよびエネルギーをプログラムする必要があります。高フルエンスビームは金属やガラスを切断できますが、低フルエンスビームは有機物を完全に除去するものの、金属は加工できません。高フルエンスビームのビームスポットサイズは最小約20ミクロン(<1ミル)で、低フルエンスビームの場合は約100ミクロン(4ミル)~350ミクロン(14ミル)が使用されます[2] [3]

ほとんどのレーザープロセスでは、最も利用しやすく経済的なCO2またはUVレーザーが利用されています。CO2レーザーを使用してエポキシ積層板にビアを形成する場合、切削エリア上の銅泊を除去する必要があります(図5を参照)。CO2レーザーは主に、ガラスで強化されていない積層板に使用されます。これにはフレキシブルポリイミドや樹脂被覆銅(RCC®)箔などの非強化積層板と、アラミドファイバーなどの別の材料で強化された積層板が含まれます。改良されたTEA CO2(Transversely Excited Atmospheric)レーザーは、9,000nmの波長と高ピーク出力を使用して、ガラスファイバーをレーザー加工するために特別に作成されたものです。

このほかにも多数の種類があります。マイクロビアホールのドリル加工を目的とするレーザーシステムには、UV/エキシマ、UV/Yagレーザー、CO2レーザー、Yag/CO2、CO2/TCO2を組み合わせた5種類があります。また、絶縁体材料にも、RCC、樹脂のみ(ドライフィルムまたは液体樹脂)、強化プリプレグがあります。したがって、レーザーシステムによるマイクロビアホールの形成手法の数は、5つのレーザーシステムと3種類の絶縁体材料の組み合わせで決まります(図5を参照)。

レーザーによる3つの主要ブラインドビア切削プロセスのスクリーンショット

図5.レーザーによる3つの主要ブラインドビア切削プロセス。
c: UV
またはCO2レーザーを使用した特殊処理による銅箔開口部の切削、
d:
エッチングによる銅箔開口部の切削と絶縁体のレーザー加工、
e:
エキシマレーザーによる材料でのビア作成とスパッタリング
または無電解銅メッキmSAP
による絶縁体の金属被膜

 

高出力レーザー(紫外線)はガラスと銅を除去できるため、従来型積層板で使用できますが、銅およびガラスファイバーの切削時はたいていの場合速度が遅くなります。レーザービア加工には、レーザー加工する穴(マイクロビアホール)の位置精度、不均一な穴の直径、絶縁体硬化後のパネル寸法の変化、温度および湿度の変動によるパネル寸法の変化、露光装置の位置合わせ精度、ネガティブアートワークの不安定な性質など、考慮すべき点がいくつもあります。これらはどれもマイクロビアホール加工にとって重要な要因であり、注意深く観察する必要があります。
 

金属化手法

最後のプロセスはビアの金属化です。HDIプロセスで使用されるIVHの金属化方法は、次の4つです。

  • 従来型の無電解銅めっきおよび電気銅めっき
  • 従来型の導電性黒鉛またはその他のポリマー
  • フルアディティブ法およびセミアディティブ法による無電解銅めっき
  • 導電ペーストまたはインク(図6fおよび6g)

レーザーは、導電ペーストを充填するマイクロビアの作成手法として最も一般的です。レーザーは絶縁材料を除去して銅回路と交差した時点で止めることができるため、深さを制御したブラインドビアの作成に最適です。図6に、これらの2つの主なマイクロビアプロセスを示します。

導電ポリマーを使用したマイクロビアホールの金属化のスクリーンショット

図6.アジアで最も一般的な、導電性ポリマーを使用した2つのマイクロビアホールの金属化
プロセス。f: BBiT
プロセスで銅箔上に導電性銀ペーストを被せて両面コアに積層、g: 各種の
導電ペーストをb
段階でレーザードリル加工した絶縁体の穴に被せ、銅箔でコアに積層

 

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筆者について

筆者について

Happy Holdenは、GENTEX Corporation (米国最大手の自動車エレクトロニクスOEM企業) を退職した人物です。世界最大のPCB製作業者、中国のホンハイ精密工業 (Foxconn) の最高技術責任者を務めた経験もあります。Foxconn入社前は、Mentor GraphicsでシニアPCBテクノロジスト、Nanya/Westwood AssociatesおよびMerix Corporationsのアドバンストテクノロジー マネージャーを歴任しています。Hewlett-Packardに28年余り勤めた後に、同社を退職しました。前職はPCB R&Dおよび製造エンジニアリング担当マネージャです。HPでは、台湾と香港でPCB設計、PCBパートナーシップ、自動化ソフトウェアの管理を担当していました。Happyは、47年以上にわたり高度なPCBテクノロジーに携わってきました。4冊の本でHDI技術に関する章を執筆しているほか、自身の著書『HDI Handbook』も出版しています (http://hdihandbook.comで電子書籍を無料公開しています)。また、最近、Clyde Coombsとの共著『McGraw-Hill's PC Handbook』第7版も完成にこぎつけました。

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