PCB設計の業務では、製造業者やベンダーに要件を伝えることが最も重要です。正しい情報を提供しない、十分な情報を記載しない、あるいは情報を提供しないことによって、こちら側の要件が伝わらないことがあります。経験豊富なPCB設計者であれば、PCBスタックアップに必要な要素をすべて指定することができます。しかし、実際には、利用可能な材料と処理能力、歩留まりの観点から、製造業者がその決定を行うことになります。
スタックアップから分かる情報は、PCBの基本構造だけではありません。コアと絶縁体材料の特性で、スタックアップに他の多くの設計上の考慮事項が組み込まれています。製造業者の能力、材料の在庫、インピーダンス要件に応じた設計を実現するため、設計者はスタックアップ要件を明確に定義しておく必要があります。設計開始時にこのアドバイスに沿って、製作業者にどのようなスタックアップが可能か事前に聞いておくと問題はないでしょう。製造業者が対応可能なレイヤースタックを想定して設計することで、連携がよりスムーズになります。
既存の設計があり、互換性のある材料一式でどこでも生産できるようにする必要がある場合や、受け取った基板が要件に当てはまらないという事態を避けるには、どうすればいいのでしょうか。こちらの記事では、こうした点についてご説明します。これらのコツを取り入れると、単に「製造に適した」設計を行うのではなく、「製造と連携する」設計を行えるようになります。
前述したように、設計の初期段階では標準的なスタックアップを入手し、それを設計に利用することが一般的です。これにより、試作品の設計から生産まで最短で進めることができます。もう一つの方法としては、少なくともご自身で選んだ材料でスタックアップを設計し、それを製造業者と確認することです。その後に製造可否に関する連絡をしてもらうか、ご自身でその後の対応(スタックアップの設計をやり直すか、別の業者に送るか)を決定します。
既に設計が完成している場合は、プロセスは多少異なります。設計に入る際には、ベア基板の製造業者が、次を含む複数の条件を満たせるかどうかを確認する必要があります。
当社ではポイント3についてあまり触れず、ポイント1、2の一部としてDFMを取り上げることが多くあります。ポイント3のPCBレイヤースタックアップに必要な変更点を考慮することができれば、仕様に合わない基板が出来上がるリスクを防ぐことができます。
PCBスタックアップの要件を満たすための手段として、回路基板の要件を指定するために使用できる重要な文書がPCB製造図です。スタックアップ図と製作上の注意事項リストの両方を使用して、PCBレイヤーのスタックアップ要件を製造業者に伝えるとよいでしょう。
製造図では、レイヤーのスタックアップ図でほぼすべての要件をすぐに指定することができます。これが、基板に必要な基本要件を製造業者に伝える最もシンプルな方法です。下記の例は、高速プリント基板、パワーレギュレーターモジュール、マイコン基板、その他汎用基板に使用可能な4層基板の設計です。
この図面から、製造業者が満たすべき重要な仕様の一部をこの時点で確認できます。
クライアントから要件リストを受け取ると、これらのポイントがまとめてスタックアップの図面に追加されることもあります。製造業者に設計出力を提出する際、そのファイルパッケージの一部としてスタックアップドキュメントやその他の要件に関するドキュメントを含めることは問題ありませんが、これらの情報は製造図にも反映させる必要があります。そのためには、上図のようなスタックアップの図面が最適です。
絶縁体とインピーダンスの特性はどうでしょうか。特定の材料一式を念頭に置いて設計している場合、これらをPCBレイヤースタックアップ図に含めることは可能ですが、明示的に記載する必要はありません。このような許容差を考慮した設計を行うためには、トレース幅やレイヤーの厚さの許容差を指定する必要があります。
比誘電率、熱特性/化学特性、インピーダンスの目標値(これを指定している場合)に確実に対応して設計を進めるには3つの方法があります。
オプション1では基板を正確に作成することができますが、特定の材料一式を提供する製造業者しか、基板を作成できません。オプション2、3はより一般的な方法であり、あらゆる面で要件を満たせる可能性がある一方、製造時にインピーダンスのコントロールテストを依頼しなければならない場合があります。
オプション2の実装は、製作上の注意事項リストで簡単に行えます。下の画像は製作上の注意事項リストの一例であり、材料一式がどのスラッシュシートに適合しなければならないかを明記しています(赤枠の注記16.C)。なお、インピーダンスをコントロールする必要がない場合でも、このような実装が可能です。
オプション3の場合、製造業者がこれらの仕様を少し調整する必要がある場合があります。レイヤーの厚さやトレース幅の許容差は、製作上の注意事項リストに明記する必要があります。下の例では、これを製造業者の許容差として指定する方法を示しています。赤枠には、製造工場に最初に提供される設計に実装される公称インピーダンスが明確に記載されています。青枠には、トレース幅とレイヤーの厚さの許容差が明記されています。
このように指定することで、製造業者により使用される材料の比誘電率が、設計で使用した材料と異なる可能性を考慮できるのです。常に必要な比誘電率を確保できるわけではないため、インピーダンスが注記18.Aで定義した仕様から大きく外れるような差がある場合は、トレースを調整して補正する必要があります。
PCB設計のドキュメントをまとめ、製造ファイルパッケージを生産に回す準備ができたら、Draftsmanパッケージの自動製図ツール(Altium Designer®で利用可能)を使用します。製作データを製造業者にリリースする準備ができたら、Altium 365™プラットフォームを通じて、簡単に設計を共有し、共同作業することができます。高度な電子機器の設計と製造に必要なものはすべて、1つのソフトウェアパッケージに含まれています。
ここでは、Altium 365とAltium Designerでできることについて、その一部を紹介したに過ぎません。今すぐ、Altium DesignerとAltium 36の無償評価版をお試しください。