Elmatica社: 完全デジタル化のサプライチェーンを推進

Judy Warner
|  投稿日 2019/03/13, 水曜日  |  更新日 2020/11/12, 木曜日
Elmatica社: 完全デジタル化のサプライチェーンを推進

 

最近、サンディエゴでのIPC APEX開催中に、Elmatica社のCEOのDidrik Bech氏と面会しインタビューする機会に恵まれました。毎年このカンファレンスにReal Time with IPC のゲストエディターとして参加し、Bech氏のような興味深い業界リーダーと出会う素晴らしい機会を得ています。フォローアップとして、OnTrackニュースレターの読者のためにBech氏に再度インタビューを依頼し、この魅力的なノルウェーを拠点とするPCBブローカーについて知ることができました。Elmatica社は30以上の国で存在感を発揮し、データ駆動型アプローチを使用して、顧客に比類ない透過表示を提供して完全にデジタル化されたサプライチェーンを実現する先頭に立っています。

 

Elmatica社CEO、Didrik Bech氏

 

Judy Warner: ご自分のキャリアと、Elmatica社の沿革およびモデルについて簡単に教えていただけますか。

Didrik Bech: Elmatica社は1971年にノルウェーのオスロで設立されました。会社は当初PCB設計会社でしたが、その後PCB製造機能を持ち、最終的には専門プリント基板ブローカーになりました。当社のミッションは、お客様の購買プロセスを完結させ、当事者間の説明責任を保証することで、パートナーに対する取引の透明性を実現することです。これは、当社の製品、つまりコンサルティング、調達、製造、および流通をプロセスに入れ込むことによって、お客様の製品開発プロセスを保護することを意味します。

当社はお客様の製品開発プロセス全体のパートナーで、設計段階の選択標準や価格の見積りについて助言を行うアイディア段階から、最初のプロトタイプの供給を検証して最終的な製品出荷において、適切な製造業者とコンプライアンスの側面が選択されているようにします。当社のシステムは自動的に全ての通信を追跡し、各プリント基板の100以上の特性を分析し、それを見積書で明確に確認できます。当社は綺麗なパワーポイントによるプレゼンテーションやマーケティング書類を提供するのではなく、何をどういう方法で行っているかを示すことにより、お客様への透明性を実現します。これらは当社のデジタルサプライチェーンのいくつかの要素で、当社のお客様の製品を守ることに特化しています。

私は8年前にこの会社に入社し、今は計48年間のキャリアで3番目のCEOを務めています。会社の財産と文化は2本の責任の柱で、育み発展させて将来の技術的機会に足並みをそろえる必要があります。Elmatica社は過去8年間以上にわたって新しい情報技術機能を開発していますが、これは能力の高い組織と先見の明のあるオーナーによって可能になっています。

ほとんどの会社で毎年従業員に変化があります。Elmatica社では、役職から離れる人はほとんどいません。この何をどんな方法でやるかについての安定性と情熱はお客様へも引き継がれています。そしてもちろん、当社はちょっとひねりを効かせて物事を行うのが好きで、たとえば最初の会社映画を作った時にはカルト映画Lock, Stock and Two Smoking Barrelsに少し影響を受けたように、ただ歩き回りながら語るだけの顔の映像にはしませんでした。

Warner: PCBブローカーとは何で、Elmatica社が提供しているのはどんなサービスか教えてください。

Bech: 一部の方はブローカーをトレーダーと取り違えているようです。トレーダーは品物を購入して在庫に加え、後で一人または複数のお客様に販売しますが、ブローカーはお客様から注文を受けたとき、特にお客様固有の製品のときのみ品物を購入します。当社はプリント回路のブローカーで、お客様が製造業者へ伸ばした手であり、文書、データおよびコンプライアンスに関してお客様に透明性を提供して購買プロセスをシンプルにします。

透明性とデータへのリアルタイムアクセスは、PCB業界だけでなくグローバルなメガトレンドです。朝食に卵を買うとき、卵はどこで取れたか、エコか、持続可能か、農家は監査を受けて承認されているか、ニワトリは放し飼いかを知りたくなります。食べ物についてこのような期待を持っていますが、これを行う時間がなくまたそのやり方に関する知識もないため、個別の当事者と基準を信頼する必要があります。ですから私は、PCBと何が違うのかと聞くのです。何が起こっているかを知り、サプライチェーンでこの情報を保護したいと思うはずで、ここが当社が参入するところなのです。

Elmatica社では、製品をコンサルティング、調達、製造、および流通の4つのカテゴリに分類しています。経験上、製品開発の早い段階から関与することは、全ての関係者にとって有利です。これにより実際の製品に対する設計の課題、技術と最も妥当性の高い設計の作成が選び出されます。当社のミッションはお客様の購買プロセスを完結させることと共に、お客様との課題を入力して、それを当社がサポートできる製造業者の代理としても完結することです。

Warner: たくさんのPCB設計者と一緒に働いていますが、それによる課題は何で、Elmatica社では、それらの問題にどのように対処していますか。

Bech: 毎月、当社は選択したサプラヤ―に900件以上の注文を行う中で、約250件は新規の品番です。この量の作業は、製品の性能と各サプライヤーの能力について本質的な知識のある、さまざまなサプライヤー、お客様およびElmatica社の複数のエンジニアチームの協力なしには為し遂げられません。

毎日、製造、電気抵抗に関する質問、レイヤースタック、フレキシブル設計、温度管理、電源設計、機械的許容差、銅箔機能の耐久性などについての設計に携わっています。当社のお客様は、ビアホールやパッドサイズなどの最小限の向上性能、ビアホールの取り扱い方法の違い(開口から100%充填されたもの、および蓋をされたものまで)、ガーバーファイルまたはガーバー/ExcellonファイルとODB++ファイルのマニュアル変更による絶縁体のエラーに基づいて、工場の素材、特定のスタックアップ提案などの課題を持ち込みます。

ガーバーファイルとテキスト文書の仕様の競合は繰り返し発生する問題で、品目の仕様に使う共通のオープンソース言語であるCircuitDataを作成するきっかけとなったことは、言うまでもありません。

Warner: ノルウェーを拠点にしていますが、Elmatica社がサービスを行っているのはどの地域で、マーケットにはどのように参入していますか(つまり、地域別または現地営業チームなのですか)。

Bech: 本社はノルウェーにあり、当社のチームはヨーロッパ、南アフリカ、および中国にあり、5大陸の38カ国で営業しています。当社の営業チームは戦略的に配置されており、お客様のフォローに熱心に取り組んでおり、支援が必要などんな場所にも訪れています。データが鍵となる今日の世界情勢の中では、操作されるシステムは人々がいる場所と同じくらい大切です。

Elmatica社では、文書登録、技術問い合わせ、能力検証および通信追跡のためのソフトウェアを開発し、一部の側面について説明します。たとえば、当社のシステムは1つの問い合わせあたり108個のパラメーターを自動的に分析して、コスト、リードタイムおよび適切な能力のある製造者を決定します。現在導入予定の次のシステムは、1000以上のパラメーターをチェックします。

Warner: Elmatica社では、オープンソースソフトウェアプラットフォームを開発して、PCB設計の意図を明確に伝える支援をしています。このプラットフォームの目的と、作成した動機を教えてください。これがどのように、ガーバーファイル、IPC-2581、ODB+と組み合わせて機能するのでしょうか。

Bech: 以前に述べたように、Elmatica社は、長い年月にわたってプリント回路を生産するプロセスにおいて、複雑さが増していることを経験してきました。デジタル仕様書、下書き、PDF、および手動で追加された情報は、サプライチェーンに関係する全ての当事者によって常に解釈され、時間と費用がかかる状態を作り出していました。標準化言語があれば、時間を節約でき、ボード設計におけるエラー、見積り、および実際のPCB構築のエラーを減らすことができます。CircuitDataはオープンソースのソリューションで、業界がついに一体となってPCB文書仕様、会社の要件プロファイル、技術変更ノート、技術問い合わせを共通の言語で話せるようになったのです。

これは、ガーバー、ODB++、およびIPC-2581など、相互に送信し合うファイルを補完するもので、提供されていない製造情報の全ての側面に答えます。CircuitDataはオープンソースで、誰でも利用可能で、言語の開発においても言語が業界の経過を追っていることを確認する取締役会でも貢献します。

 

IPC APEX ExpoにおけるDidrik Bech氏およびJudy Warnerの
Real Time with IPC ビデオのインタビュー


Warner: エレクトロニクス業界において、次の5~10年の業界の状況の変化に対処するためにどのような戦略を持っていますか。

Bech: 未来はデータが全てであることは皆さんの知るところで、業界はゆっくりとサプライチェーンの完全デジタル化に進んでいます。現在の状況を考えてみると、サプライチェーンの一部はデジタル通信、PDFおよび紙の上に構築されています。この追跡と制御のプロセスには時間がかかり、完全に制御して概要をつかむことは難しくなっています。デジタルサプライチェーンを使用すれば、自動化、アプリケーションプログラミングインタフェース(API)、および人工知能(AI)を導入して、見積りを最初から最後までデジタル化して扱うことができます。これにより、同じ人数の同僚と、より多くの依頼を、より高い精度でより迅速に処理することができるようになります。これは購買プロセスに関わる全ての当事者にとって有益な状況です。

自動化が進む生産ラインにより効率性が向上し、お客様のために新しい価値を創造する他のタスクに集中することができます。サプライチェーンは一部のアクセスポイントから、設計者、OEM、組立業者、ブローカー、販売代理店、工場と下請け業者の複雑なチェーンに発展します。それらはデータをやり取りして、手動での作業で解釈しようとします。今はPDFから解放されてデジタルサプライチェーンを迎える時期です。

将来のことと言えば、当社は最近IPC APEXに出席し、未来主義の革新者、Tesla社のCTOであり共同創立者であるJB Straubel氏のとても興味深い未来志向の革新、設計、および銅箔の状況に関するスピーチを見つけました。革新は過去10年間で継続的にスピードが上がっており、さらに加速されます。設計および革新ツール、PCBとコンポーネントへのアクセスにより、子供であっても早い段階から設計を開始することができます。

車だけでなく会社としてのTesla社の魅力的な開発と、彼らの学びについて聞くのは、本当に感動的でした。何度かPCB007の雑誌「The PCB Norsemen」のコラムに銅箔の状況について、業界にどのように影響を与え、どのように潜在的な変化をもたらしたのかを書いています。

JB Straubel氏とTesla社もプレゼンテーションで同じこと、つまり来るべき時が来れば、原材料が最も重要な課題の一つになる可能性があるということを述べていました。

銅箔、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、およびリチウム化合物などの原材料の需要は増加し続け、これらの原材料の資源は限界に近づいています。確実に言えることは、未来は課題と機会を運んできてくれますが、Elmatica社は、このステージでデジタル特急から落ちこぼれてしまう、後から遅れを取り戻すのは困難であると悟ったということです。

Warner: 本日は、すばらしいお話をお聞かせいただきありがとうございました。

Bech: こちらこそ。このような機会をいただき、ありがとうございました。

筆者について

筆者について

Judy Warnerは、25年以上にわたりエレクトロニクス業界で彼女ならではの多様な役割を担ってきました。Mil/Aeroアプリケーションを中心に、PCB製造、RF、およびマイクロ波PCBおよび受託製造に携わった経験を持っています。 また、『Microwave Journal』、『PCB007 Magazine』、『PCB Design007』、『PCD&F』、『IEEE Microwave Magazine』などの業界出版物のライター、ブロガー、ジャーナリストとしても活動しており、PCEA (プリント回路工学協会) の理事も務めています。2017年、コミュニティー エンゲージメント担当ディレクターとしてAltiumに入社。OnTrackポッドキャストの管理とOnTrackニュースレターの作成に加え、Altiumの年次ユーザー カンファレンス「AltiumLive」を立ち上げました。世界中のPCB設計技術者にリソース、サポート、支持者を届けるという目的を達成すべく熱心に取り組んでいます。

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