当社はこれまで、授業やコンサルティング活動、そして数々の記事を作成する中で、PCBドキュメンテーションの重要性を常に訴えてきました。基板設計仕様書と共に、ドキュメンテーションは基板を初期製作、そしてそれ以降もずっと正しく製造するために不可欠です。ドキュメントは設計工程の後半で作成されるため、この工程は軽視されたり、十分な注意が払われないことがあります。複雑で多層、高密度のPCBを構築する際には、プロジェクトの製造段階でPCBに適切なドキュメントを添付することは不可欠です。
この記事では、製造工程に入るすべてのPCBに添付しなければならないさまざまな図面、ファイル、および製作上の注意事項について説明します。
PCB設計工程には、主に3種類のカスタマーがいます。
これらのカスタマーは各々で、設計データベースから抽出されたデータをそれぞれの機器に合わせた形式で印刷する必要があります。また、それぞれのPCB設計に関連する設計ルールやデータを含むドキュメントを一式作成する必要があります。提供されるドキュメントの種類とその内容は以下の通りです。
上記項目に関する詳細情報は以下の通りです。尚、以下のリストには機械製図も含まれますが、これは社内で保管されます。製造工程に欠かせない大切なものですので、以下で説明します。
機械製図は、製作図とよく似ていますが、違いは製造情報の代わりに設計情報が記載される点です。前述の通り、このドキュメントは社内で保管され、製造業者には提供されません。この図面の元になるのは、PCBのサイズと形状を定義する外観図です。この図面に記録されている情報は以下の通りです。
製作図は、上述の機械製図から作成されます。そこに最終的な穴の数が加算されると、テクノロジーテーブルは削除されます。最終的にPCBレイヤー1が外観図に追加されます。注意:過去には、すべてのドリル穴の位置とサイズを示す図がこの図面に描かれていました。現在、製作業者はこの情報を使用していないため、その価値を失っています。完成したPCBの外観を描いたレイヤー1アートワークが代わりに使用されています。
製作図にはスタックアップが含まれており、各PCBレイヤーの名前とレイヤーごとのガーバーデータが表示されています。ここで生じる1つの問題は、この2つのドキュメント間の情報が一致しないという点です。これは、設計ファイルとスタックアップのレイヤーを一致させようとする製作業者にとって厄介な問題となります。結果としてレイヤーが間違った順序で重なってしまいます。そのため、設計ファイルのラベルとスタックアップ図の名称は同じものを使用する必要があります。図1は、製作図のレイアウトを示したものです。
図2. よくある製作図面のレイアウト
表1は、レイヤー数が多く、インピーダンスが制御された基板を作るために必要な製作上の注意事項のリストです。
表1.よくある製作上の注意事項リスト
表2は、多層基板の製作に必要な設計ファイルリストです。
表2.製造業者に必要な設計ファイルリスト
「IPC-356」と指定されているCADネットリストには、すべてのコンポーネントピンの配置が記載されています。CADネットリストはベア基板の試験装置の準備に使用され、その後、ガーバーデータから合成されたネットリストと比較されます。
実装図には、すべての電子部品を基板に実装するために必要な情報が記載されています。また、すべての機械部品の取り付け方も記載されています。実装情報に含まれる情報量が多く、このファイルは数ページに及ぶことも少なくありません。
実装ファイルには、すべてのコンポーネントの配置、部品表、プログラム可能な部品に組み込まれたコードや製造業者が基板を実装するのに必要なその他の情報が含まれています。
テストポイントファイルは、基板へのインサーキットテストにアクセスできるようにするために基板に設計されたテストポイントのリストです。
設計された基板が製造されるまでの過程を記録するドキュメントを作成することは、当たり前のことと思われるかもしれません。しかし、上述のような理由から、この情報を作成する際には注意が必要です。また、基板の製造にあたり行われた複数の設計作業で蓄積された様々なドキュメントは、最終製品の製造に向けてPCB設計ファイルに添付される前に、徹底的にレビューし、承認されることをおすすめします。
詳細をお知りになりたい場合は、製品ページで詳細な機能説明をご覧になるか、アルティウムの担当者までお問い合わせください。