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Judy Warner
|  投稿日 十月 12, 2021  |  更新日 十月 21, 2021
Finger touching screen

回路基板の設計、シミュレーションの実行、部品の調達、正確なBOMの作成、出力ファイルの生成が完了した後、その場で「製造へ送信」ボタンを押すだけでよいとしたらどうでしょう?実現しない夢のように思えるかもしれませんが、MacroFab社のMisha Govshteyn氏への今回のインタビューでは、近い将来、この夢を実現するためにアルティウムとどのように提携していくかを知ることができます。

Judy Warner:
MacroFab社の簡単な概要と、電気技術者による電子機器受託生産サービス(electronic manufacturing services (EMS))の調達と利用を改善するためのソフトウェアソリューションをどのように開発されたのかについて教えていただけますか。

Misha Govshteyn:
MacroFab社は、電気実装向けのデジタル製造プラットフォームであり、基本的には技術者が新しい設計にかける時間を短縮し、企業が製造コストの低い地域でNPI段階から製造まで、規模を調整しつつ製品を市場に投入できるように支援するものサービスを提供しています。このサービスでは、北米全域の専門的な工場にアクセスできるため、顧客は製造のすべての段階でシームレスに規模を調整できます。当社は、AWSやAzureと同様のクラウド型の製造サービスを開発したいと考えた2人のロボット工学技術者によって創設されました。  

電気技術者向けには、ソフトウェアと最新のAPIが活用されたターンキーのPCB実装サービスが提供されています。このサービスでは、あらゆるボリュームの設計に関する価格についてガイダンスを受けたり、リアルタイムでの部品の在庫や価格のデータを確認したり、セルフサービスのインターフェースからオンラインで注文を行ったり、会社で事前に承認された発注書を使って注文したりすることができます。すべての製造データはオンラインのため、技術者は基板への変更を追跡して、設計が製造のためにサプライチェーンチームに回される際に、データの整合性を確保することが可能です。 

サプライチェーンチーム向けには、米国、カナダ、メキシコの70を超える工場から、製造での電気実装サービスを調達するためのシンプルなプラットフォームが提供されています。ここでは、間接費を抑えつつ、最良の価格、品質、リードタイムを提供する適切な工場とそれぞれの業務が一致します。サプライチェーンチームは、PCBの実装から電気製品の完全な実装とテストまで、すべてに対応するためにMacroFabプラットフォームを利用しています。一方、企業はMacroFabを利用して、米国に拠点を置く既存の委託電気製造業者から統合ベンダーによる製造へ、または中国から米国/メキシコでの自国製造やニアショア製造へと移行しています。  

Warner:
現在、解消に向けて取り組んでおられる蔓延した問題と、ハードウェア開発の改善に向けてソフトウェアをどのように利用されているかについてお聞かせください。

Govshteyn:
基本的に、MacroFabは分散型ソフトウェア対応の工場です。従来の製造でよく見られたのは外注でした。つまり、1つの工場と契約して製品を製造してもらうのですが、その工場で問題が発生したらどうなるでしょう?それは、顧客にとっても問題になることを意味します。一方、MacroFabはクラウドの原則を足場とするサービスとして利用されており、仕組みがかなり異なります。 

その1つ目は、EDAツールのネイティブ設計ファイルから開始し、多くの場合はフォーマットについて理解するためにEDAソフトウェアプロバイダーと密接に連携することです。これによって、部品表から実装向けの指示に至るまで、製造のための真の情報源を構築できます。MacroFabソフトウェアでは製造プロセスが統合され、どの工場でも製造が同じ方法で進められます。  

2つ目は、MacroFabがすべての製造業務のためのコントロールプレーンだということです。つまり、部品を調達し、それを工場に届けるために製造キットとしてまとめ上げ、製品の品質に対して最終的な責任を負うのです。実際、MacroFabは多くの場合、NPIのプロセスを経て、カスタムのテスト装置を設計し、各ジョブの一環として工場に直送しています。 

3つ目は、北米全域での工場の分散ネットワークが構築されていることです。これらの工場には、少量の製造を専門としているところもあれば、メキシコで数十万単位の製造を行う超大規模なところもあります。そのため、私たちはTier 1製造業者にしか対応できない方法で規模を調整しながら、彼らよりもはるかにすばやく対処できます。製造量と成長率を最大限にするために、複数の工場で製品を並行して製造されている顧客もいます。

最後に、ソフトウェアはクラウド設計のパターンを土台に構築されています。つまり、失敗を考慮に入れて設計し、何か間違いが起こってもおかしくないし、実際に起こるだろうと想定しています。これはまた、すべてがカスタムのソフトウェアスタックに基づいていることを意味します。製造が然るべき方法で行われるようにするために、このスタックはゼロから設計されています。つまり、他の製造業者にはできないことが私たちにはできるわけです。需要に先んじて調達を行い、完成品を含めて在庫を確保しています。また、実装、テスト、パッケージングが完了した製品を直接、エンドユーザーに発送することもあります。 

また、サプライチェーンに関する制限を抜本的に見直す方法もいくつか特定しています。部品の調達が完了したら北米のどこででも製品を製造できることを、多くの顧客に体験していただいています。コンテナ船が何週間も港に停泊するという悲劇は、私たちにそれほどの影響を及ぼしません。中国からやって来る原材料が影響を受けるだけで、完成品は遅延なしですばやく顧客に届けることができます。 

Warner:
最近、MacroFab社とアルティウムは正式な提携を結びました。アルティウムがMacroFab社に投資したのは、電子製品の設計から最終組み立てに至るまで、より良く、より現代的な方法というビジョンを共有したからです。  

この提携によって、どんな機会がもたらされるとお考えですか?

Govshteyn:
現在、私たちのプラットフォームを連携させる方法について、アルティウムのチームと非常に密接に協力していますが、最も重要な利点の1つはネイティブ統合そのものになるでしょう。現在、MacroFabのプラットフォームは主要なEDAツールをすべて対応していますが、第三者として設計ファイルを解析しているため、データの解釈には妥協や代償が伴います。 

Altium DesignerやAltium 365を支える技術チームとの密接な連携は、作業の進め方を根本から変えてくれましたMacroFabを使って設計ファイルから迅速な製造見積もりに移行するプロセスは、はるかに簡単で間違いも発生しないものになるでしょう。技術者にとって最も明白な利点は、設計が製造に回る際に必ず発生するミーティングやメールでのやり取り、電話会議の件数が大幅に減ることでしょう。これは、真にクラウド化された製造業への大きな一歩となるでしょう。そこでは、ある会議から別の会議へ情報を伝えていくという原始的なやり方ではなく、ソフトウェアがデータの経路をコントロールします。 

最終的には、製造段階で加えられた設計の変更をMacroFabがAltium Designerにフィードバックできるようになるでしょう。これは、製造委託、特に中国への製造委託における後ろ暗い秘密です。設計が工場に到着したとたんに製造業者が設計に手を加えても、それらの変更がEDA環境に必ず戻ってくるわけではありません。昔から中国で生産されている製品の設計の工程は奔放きわまりないものでしたが、製品の段階ではそれがわからないものもあります。この問題は、十分に練られたソフトウェア主導の環境では発生しません。


Warner:
より具体的なトピックとして、今年はサプライチェーンが大きな問題を引き起こしました。MacroFabは、現在の部品不足の蔓延にどのように対処していますか。設計技術者の現状を改善するために、MacroFabができることはありますか。

Govshteyn:
MacroFabはデジタルプラットフォームなので、顧客は当然、設計を変更して製造に回す方が簡単だと感じています。サプライチェーンの遅れを確実に回避する唯一の方法は、いくらでも入手できる代替品を利用することです。 

MacroFabについて理解する上で最も重要なことは、きわめてソフトウェア主導型でありながら、結局は複数の技術に精通した企業だということです。サプライチェーン、技術、品質の各チームが設置され、部品の保管と完成品の受け取りに使用される大規模な倉庫が確保されています。結局のところ、製造とサプライチェーンの大半は実世界に存在しています。最も大きな問題を解決するには、現実の動きに応じた臨機応変な対応が必要になります。ですから、私たちは自分たちのやるべきことをやるだけです。時には、製造の時点で必要なものを確実に準備しておくために、製造に先立って部品を調達することもあります。最近、戦略的調達グループを設置しましたが、部品の調達が非常に難しくなっているのがわかります。一方では、それは機敏に製造を行い、顧客にプロセスの加速化という選択肢を提供することにもなります。たとえば、国外で調達する部品の到着が遅れたのなら、複数の工場で並行して製造を行ったり、製造場所をメキシコから米国に変更したり、製造ラインを離れた製品から順次、出荷したりすることで、時間のロスを取り戻します。やれることはすべてやるだけです。ですから、決してソフトウェアだけというわけではありません。必要であれば、顧客のために壁を突き破って走ってもいいという人材が揃っています。  


Warner: 
提携の話に戻りますが、MacroFabチームとアルティウムチームは現在、オンデマンドの製造やManufacturing as a Service (MaaS) の実現に向けて意欲的に取り組んでいます。アルティウムの顧客にこれが提供されるようになるまでに、現実的に考えてどのくらいの時間がかかりそうですか。

Govshteyn:
作業は順調に進んでいます。Altium DesignerとMacroFabがもたらす具体的な利点は、1月のAltiumLiveが開催される頃には顧客に実感してもらえるでしょう。今後数か月にわたってWebセミナーシリーズを共同で展開し、デジタル製造のトピックと概念についてあらましを説明するほか、顧客が今、抱えている最も重大な問題について彼らの声を聞き、その解決に取り組んでいきたい考えています。 


Warner:
Altium Liveでは、皆さんがこれまでに取り組んできたことを披露してくれると楽しみにしています。それまでの間、MacroFabのWebサイト以外で、読者がMacroFab社の取り組みについて確認したり、今後のWebセミナーに登録したりできる場所はありますか。

Govshteyn:
MacroFabのコミュニティはとても活発なんですよ。技術に関するポッドキャストを数千人のユーザーが聴いてくれています。また、大勢のユーザーがSlackで直接、私たちとやり取りしています。また、Twitterも面白い場所です。大半の人は気付いていませんが、MacroFabの創設者と私は、色々な人とTwitterで個人的に交流しています。これは、いわゆるマーケティング用のTwitterアカウントではありません。つまり、365日24時間、MacroFabに没頭している人々とやり取りできるチャンスがあるのです。 

Warner: 
とてもワクワクしますね。進捗を見守りつつ、これからの数か月での展開を心待ちにしています。MacroFab社についての知見を聞かせていただいて、本当にありがとうございました。これからもご活躍をお祈りしています。

Govshteyn:
ありがとうございます。たくさんのことが進行中で、これからの12か月間はMacroFabと熱心なユーザーにとって刺激的な時間となるでしょう。引き続きご注目ください。

MacroFab社CEO、Misha Govshteyn氏

Misha Govshteyn  
CEO, MacroFab


 

筆者について

筆者について

Judy Warnerは、25年以上にわたりエレクトロニクス業界で彼女ならではの多様な役割を担ってきました。Mil/Aeroアプリケーションを中心に、PCB製造、RF、およびマイクロ波PCBおよび受託製造に携わった経験を持っています。 また、『Microwave Journal』、『PCB007 Magazine』、『PCB Design007』、『PCD&F』、『IEEE Microwave Magazine』などの業界出版物のライター、ブロガー、ジャーナリストとしても活動しており、PCEA (プリント回路工学協会) の理事も務めています。2017年、コミュニティー エンゲージメント担当ディレクターとしてAltiumに入社。OnTrackポッドキャストの管理とOnTrackニュースレターの作成に加え、Altiumの年次ユーザー カンファレンス「AltiumLive」を立ち上げました。世界中のPCB設計技術者にリソース、サポート、支持者を届けるという目的を達成すべく熱心に取り組んでいます。

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