回路設計者や基板設計者は、Sパラメーターを使用して信号が相互接続を通過する際の動作を記述することを好みます。(私の意見では)これらの重要なパラメーターは過度に一般化される傾向にあり、別のパラメーターを使った方が容易に計算できる重要なその他の数量もあります。特に、伝送線路の伝達関数は、シグナルインテグリティーの計算とシミュレーションに使用される重要な数量の1つであり、特に損失の多い媒体で相互接続をモデル化する場合に重要です。
また、伝送線路伝達関数を使用すると、インパルス応答関数を使って入力刺激に対する信号の挙動をシミュレーションすることもできます。これは、高速シグナルインテグリティーのシミュレーションや最新の信号規格のモデリングにおいて非常に重要な側面です。この方法の力は、多くのPCBエンジニアには通じておらず、ICエンジニアの範囲となっているようです。PCB設計者は、相互接続設計のこの側面を調べるのに、シミュレーションツールを使うことがよくありますが、その場合実際のチャンネルでのすべての高速効果を考慮していないため、どうしても間違った結果が生じます。
このような欠点はありますが、実際の負荷成分や終端を持つ伝送線路で信号がどのように振る舞うかを正確に把握するために、簡単に実行できる計算方法があります。伝送線路の伝達関数を計算し、システムの詳細を知ることができる、シンプルでありながら強力な方法を見てみましょう。
伝送線路の伝達関数を計算する最も簡単な方法は、ABCDパラメーターまたはSパラメーターを使用する方法です。私はモデリングに携わっており、どんな伝送線路にも一般化しやすいので、ABCDパラメーターを使うことを好んでいます。最終的に、これらは伝送線路の一般解から直接定義されます。個人的には、Sパラメーターは過度に一般化され、概念的にあまり当てはまらない状況にも誤適用されていると思います。また、さまざまなタイプのパラメーター(Zパラメーター、Yパラメーターなど)を変換する式は他にもあるので、伝達関数に到達する方法は必ず見つかることを留意しておくのも重要です。
伝送線路用に伝達関数に到達する必要性が確かでない場合は、記事の最後でその理由を解説します。とりあえず、どのようなアプローチを取るにしても、ABCDパラメーターとSパラメーターには特有の利点があることを知っておいてください。
理論的にはABCDパラメーターを使用し、実験的にはSパラメーターにこだわるという上記の話に納得できるのであれば、必要かつ重要な次の方程式に飛び込んでみましょう。
ABCDパラメーターの標準定義を以下に示します。これらの式は、インピーダンスと伝搬定数がわかっていれば、どの伝送線路にも適用されます。
ABCDパラメーター式のZ0項は、伝送線路の特性インピーダンスです。
反転可能なABCD行列は、入力電圧/電流(つまり、負荷の方向を向いている)を出力電圧/電流に関連付けるという点で「逆方向」と定義されている点に留意してください。これは問題ありません。入力電圧/電流の関数として出力電圧/電流を示す関係を作成するには、単純に逆行列を計算します。伝送線路の伝達関数はこのような計算をしなくても、求めることができます。上で定義したABCDパラメーターを次の式で使用して、伝送線路の伝達関数を取得できます。
この議論で強調すべき点の1つは、ABCDパラメーターの伝達関数と上記の式が基準インピーダンスに依存しないことです。この回路が実際には特定のソースインピーダンス(ZS)と特定の負荷インピーダンス(ZL)に接続されている考えているため、上記の伝達関数式のZSとZLの項が生じます。VNAは基準インピーダンスに依存して測定値を解釈するため、Sパラメーターの測定について考える場合、基準インピーダンスが重要になります。
この問題に対するもう1つのアプローチは、Sパラメーターを使用する方法です。上述したように、チャンネルのSパラメーターの測定値があり、ZS = ZL = 基準インピーダンスと仮定して伝達関数を取得したい場合、このアプローチが最適です。この場合、Sパラメーターは両方のポートで特定のインピーダンスZを基準にしており、単純なSパラメーターを使ってABCDパラメーターの変換を行うことができます。
変換後、これらの値を、上に示した伝達関数式に差し込めば完了です。この式のZは基準インピーダンスであり、通常はラインの負荷または特性インピーダンスとみなされます。
あるいは、Sパラメーターの測定値がないときには、ABCDパラメーターからSパラメーターを直接計算することもできます。以下の式は、両方のポートの基準インピーダンスが同じであると仮定して、ABCDパラメーターから定義されたSパラメーターを示しています。これらのパラメーターを使って伝送線路の伝達関数を計算することができます。ここでも、以下の式の基準インピーダンスに注意してください。
上記の式を使用して、VNAなど特定の基準インピーダンス(Z)での測定で何が観測されるかを予測できます。
特定のソースインピーダンスZ01 = ZS、負荷インピーダンスZ02 = ZLなど、ポートインピーダンスが異なる場合、Sパラメーターは次のように定義されます。
最後に、上記のいずれかの式で、ソースと負荷(それぞれポート1と2)でのSパラメーターと反射係数を使って伝達関数を計算できます。
Sパラメーター自体は伝達関数ですが、概念的に有用なインパルス応答を提供するという意味ではありません。概念的に満足のいく意味を持たないZパラメーターとYパラメーターについても同じことが言えます。このため、高速チャネルの特性評価には、通常(フィルターやアンプの意味での)伝達関数が用いられ、そのインパルス応答関数は、チャンネルや回路において具体的な意味を持ちます。
伝達関数を計算したら、帯域制限があるので、チャンネルの応答を計算する前にウィンドウ関数を適用する必要があります。数値的には、逆フーリエ変換とウィンドウ伝達関数 H (f) を使用してチャンネルの応答を取得するのが最も簡単だと思います。
あるいは、重畳積分定理、つまりチャンネルのインパルス応答関数を使用して、チャンネルの応答を計算することもできます。これにより、任意の刺激で励起されたときにチャンネルがどのように反応するかが正確にわかります。伝送線路の伝達関数を見つけ、チャンネルをレイアウトする準備ができたら、Altium Designer®の設計ツールとレイアウトツールを使用します。伝送線路や導波管形状の配線に必要な配線機能とレイアウト機能を簡単に利用できます。
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