データ転送速度と帯域幅は時々同じ意味で使用されることがあります。これは、アナログ回路設計の重要な技術用語を業界用語にした広告会社とメディアに負うところが大きいです。現在「帯域幅」という言葉は、ADC設計とある程度関連した意味を持つほどに誤用されています。基板設計と回路設計では、帯域幅はデータ転送速度とは無関係な、明確に区別された意味を持つ場合もあれば、受信機の信号の品質と受信機と信号間のやり取りを指す場合もあります。
データ転送速度と帯域幅の違いは曖昧になっていますが、このことは基板設計にどのように再び関連してくるのでしょうか?超高速チャンネルのシグナルインテグリティの測定基準を定義する方法を理解できるように、本記事ではこのことについて詳細に考察します。シグナルインテグリティの測定基準に関するこのような同じ考え方は、最近のUSB 4.0規格にも反映されており、より新しい高速信号規格ではさらに重要性が増すはずです。
データ転送速度とは読んで字のごとく、チャンネルやコンポーネントを介して転送される単位時間あたりのビット数です。データ転送速度はボーレート(1秒あたりの信号単位の数など)と書かれることもあり、ボーレートによってバイナリ信号方式と多値信号方式を区別することができます。これは非常に単純で、2値信号(NRZなど)の場合、ボーレートはビットレートに等しくなります。4値信号(PAM4など)の場合、2ビットが単位間隔(UI)で転送されるため、ボーレートはビットレートの半分となります。
帯域幅は一般にあらゆる分野の電子部品設計者が、次の1つ以上の意味で用いています。
最後の2つの点はデジタル設計者にとってはより重要です。PCB設計者としては、帯域幅とデータ転送速度の関係を明確にする必要があるからです。アナログ信号については、搬送波信号での変調(イーサネットなど)を使用しているか、パルス(ライダーなど)やチャープ波形(FMCWレーダーなど)を使用しているのでない限り、帯域幅を気にする必要はありません。アナログ信号の帯域幅は非常に小さく、 スペクトラムアナライザーのトレースで直接確認することができます。一般に帯域幅は、オシロスコープトレースでノイズフロアによって断たれる周波数の範囲として定義できます。デジタル周波数の場合、状況はそう単純ではありません。
ここでいう「帯域幅」とは、デジタル信号を構成する周波数成分のことを指しています。デジタル信号の帯域幅は、数学的に無限周波数に広がっているため、それほど明確ではありません。したがって、非常に高速なリンクの伝送線路の設計に使用する有益な帯域幅の定義を確立するには、デジタル信号の帯域幅に対して何らかの関連する上限値を設定する必要があります。
2値信号(NRZなど)の場合、一般的な帯域幅の定義は次のとおりです。
帯域幅とデータ転送速度をリンクする測定基準には、第5高調波とナイキスト周波数の2つがあります。中でもナイキスト周波数は、多値ビットストリームへの一般化可能性が最も高くなっています。
多値信号にとって、ナイキスト周波数は、パルス振幅変調(PAM)を用いたビットストリームのように帯域幅の定義として最適です。どのような数の信号レベルに対しても最も一般化可能だからです。ここで、帯域幅(ナイキスト周波数と等しい)は次のように定義できます。
NはUIごとの信号レベルの数で、Dはビットレートです。これは、サンプリングレートがデータ転送速度と一致する、ADCに対して定義されているナイキストの基準に関わるのと同じ考え方に概念上一致しています。つまり、チャンネルの帯域幅がX GHzだからといって、データ転送速度が2X GHzに制限されるわけではありません。シグナリング規格も重要です。実際には、その周波数成分の観点から言うと、帯域幅はケースバイケースで定義するべきであり単一の方程式はありません。
あるビットストリームの関連する帯域幅を取り上げるなら、私は2値信号に対し、コーナー周波数またはナイキスト周波数のうち必ず大きい方を選びます。多値信号の場合、帯域幅の関連指標として私はナイキスト周波数にこだわります。Sパラメーターやチャンネルの伝達関数について考える場合は、受信機によってチャンネルの関連帯域幅が制限されるため、帯域幅と同じかそれ以下の周波数に重点を置くことができます。帯域幅までの周波数での損失とインピーダンス整合を心配すればいいだけです。
データ転送速度と帯域幅の違いを理解したら、Altium Designer®のPCB設計ツールとレイアウトツールを使用して、規格に準拠したインターコネクトを作成することができます。高速インピーダンス制御設計用の配線およびレイアウト機能一式を利用できます。
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